第4章 真夏の夜の夢(ルフィ)
「ビックリしただろ・・・? だから言ったのに」
普通の人間だったら、クレイオの顔を見れば言葉を失うだけでなく、吐き気も催すだろう。
それだけ怪物じみた顔なんだ。
するとルフィは首を傾げた。
「ビックリなんかしてねェよ。面白ェ顔だなって思っただけだ」
ルフィとしては、もっとすごいものが出てくるかと期待していたのか、少々つまんなそうな顔でリンゴに齧りついている。
「面白い・・・? アンタ、バケモノのような私の顔を見て、気持ち悪くないのかい?」
「なんでだ? お前よりも面白い顔のやつ、いっぱい見てきたしな」
おれの仲間には“本物”のバケモノだっているんだぞ、と笑う。
「それに、せっかく一緒に飯を食っているんだ。顔を隠されている方が気持ち悪ィし、作ってくれた奴の顔を見ながら食う飯の方がずっとうめェ!」
クレイオは我が耳を疑った。
これは・・・現実なのだろうか。
夢ではないだろうか。
自分のこの顔を見た人間は大抵、気味悪がるか、怖がるか、笑うか、憐れむか、だ。
彼のようにまったく変わらず接してくれる人間などいない。
「ルフィ・・・」
「そのほっぺた、いったい何入ってんだ? 重くねーのか?」
再び右腕を伸ばし、人差し指でツンツンと頬をつついてくる無邪気なルフィに、クレイオは驚きながらも笑った。
「何も入っちゃいないよ、ただの脂肪の塊だ。重いんだろうけれど、生まれてからずっと一緒だからもう慣れちまったよ」
「ふーん、そうなのか」
するとルフィはニコリと微笑み、クレイオの目尻を優しく撫でた。
「おれ・・・お前の目、好きだな」
それは、彼なりの食事に対する“礼”だったんだろうか。
社交辞令として、この顔で褒めるところがあるとすれば、瞳くらいのものだからだ。
だけど再び食事にがっつき始めた彼には、裏表など微塵も感じさせない。