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【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第4章 真夏の夜の夢(ルフィ)




それにしても、彼はなんと不思議な少年なのだろう。

ヒョロヒョロとした手足に、無造作な黒髪。
大きな目の下には切り傷、その顔にはあどけなさすら残っている。

残虐で強欲とされる海賊にはとても思えなかった。


「だったら、うちに来るかい?」


その言葉は、まったく意識せずに口をついて出たものだった。
誰かを家に招こうなどと、生まれて初めてのこと。
そもそも、こんな醜い老婆の家に行こうなんていう人間がいるはずもない。

しかし、この少年を放っておくことはどうしてもできなかった。

「まだパンがあるし・・・今日の朝食の残りもある」

「本当か?! 行く!! 婆さん、いい奴だな!」

彼はなんと屈託のない顔で笑うのだろう。
クレイオに向けられた笑顔は、少しの悪意もない、無邪気な子どものそれだった。


「おれはモンキー・D・ルフィ! 海賊王になる男だ!」


少年は自らを海賊だと名乗ったというのに、老婆は心の奥が温かくなるような感覚を覚えた。
それはまるで春の陽だまりのような優しい温かさで、自然とその表情も柔らかくなる。


「私はクレイオ」


顔を隠し、全身を真っ黒なマントで覆った老婆にも、ルフィは少しの警戒心も見せずに二カッと笑った。


「クレイオかっ! 本当に助かるよ、ありがとな!」


人生とは不思議なものだ。

なるべく人に迷惑をかけないよう生きてきた自分にまさか、海軍に背いて海賊を助ける日が来ようとは。

しかし、クレイオにはこの出会いが何か特別なものに思えていた。

この少年には人を惹きつける“何か”がある。
77年間も人を避けてきた人間すらも惹きつけるほどの力が。

クレイオは生まれて初めて感じる胸の高鳴りに戸惑いながらも、ルフィを岬の自宅へと案内していた。







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