第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
出航の朝。
ゴーイング・メリー号の前では、“麦わらの一味”がゾロとクレイオを待っていた。
「おーい、ゾロ!!」
先頭で元気に手を振っているのは、この船の船長。
モンキー・D・ルフィだ。
ゾロだけでなくその男の首までも取ろうとしていたクレイオは、まるで少年のようなルフィの笑顔と、本当に麦わら帽子を被っていることに驚いた。
「へー! お前がショーフか!」
「は、初めまして、ルフィさん」
「おいコラ、ルフィ! クレイオちゃんになんて呼び方してんだ!」
「なんだよ、サンジ! お前らが言ったんだろ、ゾロはショーフと一緒にいるって!」
脳天に踵落としをされたルフィは、ブーッと膨れながらサンジを睨んでいる。
おそらく彼は“娼婦”という言葉をよく分かっていないのだろう。
でも、その先入観の無さが、クレイオにとっては心地よかった。
ゾロはそんなルフィとクレイオの隣を通り過ぎ、さっさと船に昇っていってしまう。
「ゾロ、何してんの?!」
「何って、出航の準備をすんだろ?」
「何も今しなくてもいいじゃない!」
ナミは呆れた声を出したが、ゾロはそっぽを向いて帆の方に行ってしまった。
残されたクレイオと麦わらの一味は、そんな愛想の無い剣士に苦笑いをする。
「で、クレイオちゃん。どうするんだい?」
サンジが煙草に火を付けながらニコリと笑った。
「おれ達と一緒に来るなら歓迎するぜ」
「サンジさん・・・」
「そうだぞ、クレイオ! 海は楽しいぞ!!」
「チョッパーちゃん・・・」
サンジとチョッパーだけでない。
ウソップも、ナミも、ロビンも頷いている。
そして、最後にルフィの大きな笑顔が目に入った。
「おう! ショーフもおれ達と一緒に冒険するか?」
海賊王になる、と宣言している男。
こうして向き合っているだけで、彼にはどんどん惹きつけられる。
でも、クレイオには伝えなければならないことがあった。