第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
「ハァ・・・ハァ・・・」
呼吸を整えながらクレイオを見ると、その顔は涙でクシャクシャだった。
でも、とても幸せそうな表情をしていることに安堵する。
「ゾロ・・・そこにいる?」
身体はまだつながっているというのに、クレイオは暗闇の中でゾロを探すかのように右手を伸ばしてきた。
「ああ、ここにいる」
その手を取って頬に触れさせると、安心したように微笑む。
「ゾロ・・・私は今・・・すごく幸せ」
「・・・・・・・・・・・・」
「私は今夜・・・初めて、娼婦としてではなく、一人の女として抱かれた」
その笑顔が13歳の少女のようにも見えたのは、クレイオが最後に幸せだった頃に戻ることができたからなのかもしれない。
「初めて、セックスが気持ちいいって思うことができた・・・」
ただ欲望をぶつけるだけの行為じゃない。
こんなにも幸せな気持ちになれるものなのだと、初めて知った。
「ありがとう、ゾロ・・・」
“海賊狩り”ロロノア・ゾロ。
貴方がくれた優しさを、私は絶対に忘れない。
「・・・クレイオ。お前、これからどうするんだ?」
いくらマフィアが壊滅したとはいえ、この島の人々のクレイオに対する感情は変わらない。
「ルフィには会ったことがないようだが、アイツならきっと、お前を仲間として受け入れてくれる」
「・・・・・・・・・・・」
───海に出る、という選択肢もある。
するとクレイオはゾロを見上げ、ゆっくりと微笑んだ。
「ゾロ。私は───」
その言葉の続きを口にしたクレイオは、ゾロが思っていた通りの・・・
気高く、心に決して折れない一本の槍を持った女性だった。