第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
「みなさんには、本当にお世話になりました」
温かい食事を作ってくれて、弟に最後の診断をしてくれた。
美しいお墓まで建ててくれた。
そればかりか、こうして仲間に入れてくれようとしている。
“ルフィには会ったことがないようだが、アイツならきっと、お前を仲間として受け入れてくれる”
昨晩、そう言ってくれたゾロに返したクレイオの言葉。
「私はこの島に残ります」
その決断は、その時のゾロだけでなく、その場にいた全員を驚かせた。
「どうして・・・? ここに居たって、貴方は孤独なだけでしょう?」
ナミが戸惑いながら言ったが、クレイオは首を横に振る。
「弟が塵肺になったように・・・私もいつか同じ病気を発症するかもしれない。それは、炭鉱に生きた人間の定めだから」
「クレイオ・・・」
「それにね、私はここでやることがあるの。5年前に300人以上の命を奪った私がやらなければいけないこと」
鉱山はガスが充満しているとされ、事故の直後に閉鎖された。
まだ坑内にはその時死んだ人達の遺骨が残されている。
「私はこれから・・・あの事故で死んだ人の骨を残らず集めて、お墓を作るつもり」
それで島の人に許してもらえるとは思っていない。
だけど昨日、ウソップ達に弟のお墓を作ってもらった時、本当に心が救われたから。
同じように島の人も救われて欲しい。
「もし全員の遺骨を集めることができて、まだ私が塵肺に犯されていなかったら・・・」
クレイオの目から透明な涙が零れる。
「その時は、私に海を見せてください」
それが彼女の下した決断だった。