第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
目の前にいる男は、剣士として煩悩を押し殺していたこれまでの彼と大違いだった。
「・・・ゾロ・・・!」
喉元に喰らいつこうとする野犬のように首筋に舌を這わせてくるゾロに、クレイオの全身が震えた。
怖いのではない。
これからどのような快感が待っているのか、期待と悦びで震えるのだった。
「・・・ッ・・・」
もともと言葉数がそれほど多くない人だ。
甘い言葉はおろか、“どうしたい”という願望すら口にしてくれない。
しかし、その瞳を見れば自分を欲してくれていることを痛いほど感じた。
「ゾロ・・・! 今、貴方にとって私はなに・・・?」
「・・・あ?」
その質問の意味が理解できなかったのか、ゾロはクレイオの膣を指でかき回しながら首を傾げた。
「私は今・・・娼婦としてではなく、一人の女として貴方に抱かれたいと思っている」
「・・・・・・・・・・・・」
「貴方にとって・・・今、私はなに?」
クレイオの気持ちが伝わったのか。
ゾロは組み敷いている女の髪を撫でると、二ヤリと笑った。
「今、おれが抱いてるのは、家族を失った女───」
両親が死に、そして今日、弟が死んだ。
「それでも気高く、生きようとする女だ」
その言葉に、クレイオの両目が開いた。