第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
本来は大人一人がやっと入るだけの狭いシャワー室。
そこに身体を密着させながら二人で入る。
石鹸を含んだスポンジでゾロの身体についた血や泥を落としながらも、クレイオは絶えず唇を求めてくるゾロに応えていた。
3日前、自分を“綺麗”にしてくれたゾロの身体を、今度は自分が洗っている。
時折、手が触れるたびに熱と固さを増していく彼の下半身が、愛しくてたまらなかった。
昨日まではあれほど反応しなかったのに、今はまるで一刻も早く女を抱きたいと訴えているかのようだ。
「悪ィ・・・戦闘したあとはいつもこうなんだ」
人間の血を見ると昂ぶるのは、ゾロの心に巣食う凶暴性のせいか。
しかし、クレイオは怖くはなかった。
それ以上に邪悪な凶暴性を、嫌というほど見てきたから───
「大丈夫、私の身体はそれを鎮める方法を知っているから」
娼婦に堕ちてたった一つだけ良かったことがあるとするならば。
ゾロの凶暴性を全て受け止めてやることができる、強さを得たことかもしれない。
「面倒臭ェ・・・さっさとお前を抱きたい」
もう我慢できないとばかりにクレイオを抱き上げると、頭からシャワーを被ってわずかに残っていた石鹸を全て流し、そのまま身体も拭かずに出る。
「おれが怖かったら遠慮せず逃げ出せ。最初から加減する気はねェから」
ベッドに寝かせたクレイオに覆いかぶさりながら、理性も限界に達しようとしているゾロは苦しそうに呟いた。
だが、クレイオはそんなゾロを見上げ、艶やかな笑みを浮かべる。
「もし私が娼婦として貴方に抱かれるなら、対価に見合った抱かれ方でなければ逃げ出すわ。でも・・・」
両腕を伸ばし、ゾロの頬を優しく包んだ。
「一人の女として貴方に愛されたいから、どんな抱かれ方でも私は耐えてみせる」
何百人もの命を奪った女の覚悟を甘く見ないで。
クレイオはそう言って、微笑んだ。