第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
「お父さんと・・・お母さんのお墓・・・ずっと建てたいと思っていたけれど叶わなかった・・・」
もう十分すぎるほど涙を流したと思っていた。
しかし、真っ白で美しい墓を前に、それはとめどなく溢れてくる。
「誰もそれを許してくれなかった・・・だから、弟の身体もどこかに捨てられてしまうのかと覚悟していた・・・」
墓の前には棺桶があり、そこには弟が横たわっていた。
綺麗に顔が拭かれ、伸びきっていた髪も散発してもらっている。
まるで眠っているかのようだ。
「こんな娼婦に優しくしてくれる人達がいるなんて・・・思いもしなかった」
「なに言ってんの、娼婦だからなに?」
呆れたように肩をすくめたのは、ウソップの隣にいたオレンジ色の髪の女海賊。
ロビンとは違うタイプの、健康的な美しさがあった。
「娼婦に優しくしちゃいけないって法律、ないでしょ。ま、あったとしてもそれを守るような私達じゃないけど」
「でも・・・私達は身体を売る卑しい職業だと思われているから・・・」
「娼婦が卑しいなら、海賊や泥棒はどうなるの」
「え・・・?」
驚いたように顔を上げたクレイオを、ナミは優しい瞳で見つめた。
「つらかったわよね。大切なものを守るためであっても、望まない仕事をするのは・・・」
故郷を守るためとはいえ、養母を殺した海賊の手下となった過去のあるナミにとって、クレイオの境遇は他人事と思えなかった。
「でも私・・・ここまでしてもらったというのに、貴方達に何もお礼できるものが・・・」
お金も財宝も、海賊が喜びそうなものは何もない。
それなのに・・・