第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
食事を終えて、サンジとチョッパーに連れられた場所は、島の外れにある岬。
大きな海原を正面に、背後には炭鉱だった山がそびえ立つ。
途中、炭鉱の方では大きな火災が発生しているようだったが、サンジは“気にしないで”と笑って見せた。
「さ、こちらへどうぞ」
まるで、紳士が淑女をエスコートするかのように仰々しく手を引くサンジに、クレイオは戸惑いつつも従って歩く。
そして、目の前に飛び込んできた光景に息を飲んだ。
真っ青な海と空。
母なる海に優しく抱かれるように、それはあった。
「サンジ、チョッパー! おっせーぞ!!」
「バカ野郎。レディを焦らせるわけにはいかねェだろ、ウソップ!」
後ろには緑が広がる山。
父なる大地に優しく守られるかのように、それはあった。
「サンジさん・・・チョッパーちゃん・・・あれは・・・」
「うちの狙撃手が作ったんだ。なかなかだろ」
真っ白な石を組み立てて作られた、1メートルほどの高さの墓。
その周りにはたくさんの花が飾られている。
「クレイオちゃんの親父さんとお袋さん、そして弟の墓だ」
「・・・・・・・・・・・・」
目の前で起こっていることが信じられなかった。
形はこの島の伝統からかけ離れているが、これほど美しい墓を見たことがない。
すると、長い鼻をした男がクレイオに気がつき、こちらへ走ってきた。
「お前がクレイオか・・・! 大変だったな」
「このお墓・・・」
「へへ、お節介かもしれねェが、おれ達で造らせてもらった」
見れば、墓にはクレイオの弟だけでなく、父親と母親の名前も彫ってある。