第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
ドォン・・・!
突然、耳をつんざくような爆音が轟く。
その音に、5年前の惨劇が脳裏をよぎったのはクレイオだけではなかった。
慌てて家から飛び出すと、近所の人間達も顔色を変えながら出てくる。
「何事だ?」
「山の方からだったよな?!」
・・・山?
今、炭鉱へのトンネルは封鎖されているはず。
ガスの突出の危険があるとして、海軍が出入りを禁じている。
鍵を持っているのは、炭鉱を管理していた“会社”の副社長だけだ。
しかし、山の方から黒い煙が立ち上がっているのが見える。
炭鉱で爆発が起きた・・・?
いや、あの煙の上がり方は違う。
あれはまるで───
「おうおう、ゾロの野郎、派手に暴れているようだな」
クレイオが呆然としながら山の方を見つめていると、ゾロの名前を口にする男の声がした。
「え・・・?」
振り返ると、そこには前髪を流して左目を覆い隠している金髪の男性。
細身のスーツを着ているが、ゾロの知り合いなのだろうか。
クレイオが首を傾げると、その男は一瞬にして表情を変えた。
「君がクレイオちゃんだね!! 愛を込めて作ったお弁当、持ってきたよ~!!」
「お、お弁当・・・?」
目の前に大きな重箱を出されたが、事態を飲み込むことができない。
この人は、いったい誰だ・・・?
すると、目をハート形にしている男性の後ろから、小さな影が飛び出してきた。
「クレイオ!」
「チョッパーちゃん!!」
ということは、この金髪の男もゾロの仲間ということか?