第10章 機械仕掛けの海賊はブルースを歌う(フランキー)
それは奇跡に等しかった。
人体と機械を融合させる大手術が成功する可能性は、0%に限りなく近かっただろう。
それでも、麦わら海賊団の船大工と船医はその類稀なる技術で不可能を可能にしてみせた。
「信じられねェ・・・」
それは手術を終えたチョッパーの第一声だった。
フランキーが滝のように流れる汗をぬぐいながら、工具を台に置く。
バイタルは正常。
クレイオは何度も危篤状態に陥りながら、海兵としての意地と覚悟で耐えきってみせた。
改めて成功を確認した二人は顔を見合わせる。
「フランキー・・・」
「チョッパー・・・」
次の瞬間、飛びあがるようにしてガシッと抱き合った。
「信じられねェ!! おれ、お前がクレイオを殺しちゃうんじゃねェかって思ったよ!!」
「アウッ、何言ってやがる!! 名医チョッパーが居たんだ、患者を死なせるわけねェだろ!!」
「な、何言ってんだ、コンニャロウ!! 褒められても嬉しくねェぞ!!」
二人の歓喜の声は、ダイニングルームに集まっていた仲間達にも届いたようだ。
ドタドタと走ってくる音がしたかと思えば、ルフィが真っ先に飛び込んできた。
「フランキー、チョッパー、成功したんだな!!」
仲間を信じて疑わなかった船長が満面の笑みで、フランキー、チョッパーと派手にハイタッチを交わす。
彼が信じていたのは仲間だけではない、女海兵に対してもそうだった。
「死ななかったな、海兵女」
手術台で静かに眠っている姿を見て、二ッと白い歯をのぞかせる。
頭に白い包帯を巻き、身体は手術用の緑色のドレープがかけられているクレイオ。
船長の視線がゆっくりと上半身から下半身の方へと移ると、そこには手術前には無かった膨らみがあった。