第10章 機械仕掛けの海賊はブルースを歌う(フランキー)
「うおー!! 脚、見てみてェ!」
興奮気味にドレープをまくろうとしたルフィの頭に、二つのゲンコツが落ちる。
一つは人間化したチョッパー、そしてもう一つはサンジだった。
「手術したばかりだから清潔にしておかなきゃなんねェんだ!! 触っちゃダメだ!!」
「レディの脚だぞ、気安く見んじゃねェ!!」
ルフィは頭を押さえながら恨めしそうにしていたが、こればかりはチョッパーとサンジが正しい。
いずれにせよ、回復すればいくらでも拝むことができるだろう。
「あ、そうだ、ウソップは大丈夫か?」
クレイオの“脚”も早く見たいが、それよりも輸血のために一緒に手術に参加していた仲間のことが気がかりだ。
すると、ウソップはクレイオが寝ている手術台の向こうに横たわっていた。
「実はウソップには想定以上に血を分けてもらった。だから今は輸液中なんだ」
チョッパーは少し心配そうにウソップの方を見た。
血を失うという恐怖に対する自己防衛本能からかスヤスヤと眠っているが、命に別状はないらしい。
「ウソップがいなかったら、この手術は成功していなかった」
フランキーも感謝しきりといった様子で、ルフィはそんな二人を見てニコリと微笑んだ。
「ウソップだってお前らを信じていたから血を分けたんだ。何も心配ねェさ!」
ビョンと腕を伸ばすと、フランキーとチョッパーの頭をガシガシと撫でまわした。
二人ともまだ汗でびっちょりと濡れていて、これがどれほどの手術だったかを物語っている。
「二人とも良く頑張ったな」
“忘れるな、これはおれの仲間とお前の勝負だ”
麦わら海賊団が手にした銃から放たれた弾丸。
それがクレイオの心臓を貫くかどうか、それは───
「さぁ、こっからは海賊女の勝負だ」
新しい“翼”でどこまで飛ぶことができるか。
もしお前に覚悟があるならば、おれ達の敵になってみせろ。
ルフィを始めとした麦わら海賊団が一堂に会し、眠る海兵を見つめる。
その瞳は優しいながらも、未来の強敵を歓迎しているようだった。