第10章 機械仕掛けの海賊はブルースを歌う(フランキー)
“おれはこれから、死んだ方がマシだと思うほどの痛みをお前に与え、自分の意のままに動かない身体に作り変える”
脚を失ったことが絶望の原因だとしたら。
“その痛みはお前に死をもたらすかもしれねェ。意のままに動かない身体は、お前をただの人形にしちまうかもしれねェ”
その脚を再び取り戻せるなら、どのような痛みにでも耐えてみせる。
“これは、おれ達とお前の勝負だ”
ここで痛みに負ければ、これが“最後”。
しかし、ここで痛みに勝つことができれば、これが“最初”の戦いとなるだろう。
“海賊が海兵の身体を改造する、か・・・”
海賊と戦う覚悟。
称号を持たない海兵が、億越えの大海賊に“敵”として認めさせる覚悟。
それらを持てた時、初めて私は海賊の脅威となれる。
命を散らせるなら、誰もいない海岸から身を投げるより、海賊との勝負の中で散らせるべきだろう。
私は親不孝をしてまでなった“海兵”なのだから。
「そんな・・・信じられない!! フ、フランキー、脈が戻ってきているよ!!」
「よォし、よくやった、チョッパー!! そのまま持ちこたえさせろ!!」
人生で一度くらい、私一人の力で海賊に勝ってもいいじゃないか。
「死ぬんじゃねェぞ、クレイオ。おれ達、麦わら海賊団がオメェに新しい翼を与えてやる」
勝つんだ。
生きるんだ。
お前達に“敵”と認めさせるんだ。
生きろ、生きろ、生きろ。
「ああ、そうだ!! 生きろ、海兵女!!」
手術室から離れたダイニングにいるルフィも朗らかにそう叫んだ、その瞬間。
それまで危篤状態に陥っていたクレイオは恐るべき生命力を見せ、バイタルサインがみるみるうちに正常値へと戻っていった。