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【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第10章 機械仕掛けの海賊はブルースを歌う(フランキー)






その頃、クレイオはまさに生と死の狭間を揺れ動いていた。

身体が宙に浮いているように一切の重力を感じず、冷たさも温かさも感じない。
心地良さも息苦しさも無く、例えるならば全身の感覚が死んでいるようだ。

ただ静かに目を閉じていると、遠くから父の声が聞こえてきた。


“女が海兵になれるわけがない”


勘当されて以来、一度も顔を見ていない父と母。
化粧の一つもせず、男達に混じって銃を構える娘をきっと恥じていただろう。


“どうしてそんなに危険な仕事を選ぶんだい。後生だから考え直しておくれ”


母の涙を思い出した瞬間、それまで忘れていた苦しさや痛みが襲ってくる。

海兵になっただけであれだけ嘆いていたのだから、両脚を失ったと知れば気を失ってしまうかもしれない。
きっと私は世界で一番親不孝な娘だ、海兵という職業を知ってしまったことを後悔すらしている。

それでも私は、海兵であることを辞めたいと思ったことはないし、海兵としての天命をまっとうできないならば海兵のまま死のうと思った。


“死にたきゃ勝手に死ね。おれ達は止めねェぞ”


でも、一度は捨てた命を再び拾い上げてくれたのは皮肉にも海賊だった。


“現実から逃げるために自殺を選ぶような奴の命、いくつ懸けたっておれ達の敵にはならねェ”


海賊は敵だ、海賊は悪だ。
しかし、いくら信念を持っていたとしても、それを貫くだけの覚悟が無ければ、それはただの虚勢にすぎない。









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