第10章 機械仕掛けの海賊はブルースを歌う(フランキー)
そういえば、深く眠るなんていつ以来だろう。
麻酔がかけられてからどのくらい時間が経ったか分からない。
数十分・・・?
いや、数時間か・・・?
分からないけれど、随分と心地い。
海兵になってから寝ても覚めても緊張していて、ゆっくりと眠るなんてことは無かった。
自分は今、確かに意識がないはずなのに、遠くで鳴っている機械音が聞こえるような気がする。
ピッピッという電子音は、生体反応計測器だろうか。
ガリガリというノコギリ音は何を切っているのだろう。
麻酔のせいで何も感じないが、自分の身体が少しずつ削られていくのが分かる。
きっとチョッパーの医術が無ければ、
ウソップの輸血が無ければ、
命を繋ぎとめておくことができないだろう。
「チョッパー、そこを10センチほど切開してくれ。センサーを埋め込む」
「分かった。ウソップ、もう少しだけ頑張れそうか?」
「お、おう! なんてったってウソップ様だぜ、あと100リットルはいける!! た・・・たぶん」
そんな会話が聞こえてくるものの、身体が切り開かれている感覚も、何かを埋め込まれている感覚も無かった。
それはチョッパーの配合した麻酔薬が完璧だったこと、意外にもフランキーの施術が早くて正確だということだ。
もしかしたら彼らの知識と技術はすでに、海軍が持つそれを上回っているのかもしれない。
しかし、それを惜しげもなく海兵に与えるとは・・・
本当に・・・なんという海賊達なのだろう───
僅かながらも麦わら海賊団を称賛する心が芽生え始めていたクレイオ。
しかし、この時の彼女はまだ知らなかった。
本当の“痛み”は身体を改造されている今ではなく、麻酔から覚めた後に襲ってくることを。