第10章 機械仕掛けの海賊はブルースを歌う(フランキー)
それから数日。
フランキーはクレイオの脚を設計すべく、チョッパーとともにフランキー兵器開発室に籠っていた。
人体の器官を機械に置き換える大手術は、一朝一夕でできるものでない。
ましてや脳から発せられる電気信号を受信し、それを正確に動作させるとなると、神経細胞を人工的に作り、さらに脊髄と上手く連結させなければならない。
フランキーの科学技術、チョッパーの医学知識をもってしても、成功する確率は10%以下だった。
しかし、普通の感覚なら“無謀”と思えるこの手術も、麦わら海賊団にとってはまったく違うようだった。
「だからよ! せっかく新しい脚を付けるんだったら、ケンタウロスみてェに4本にした方がいいって!」
「バカ言え、世界一の美脚にした方がいいに決まってるんだろ!! 弾力や張りがありつつもほっそりとしていて、足首はキュッとくびれていて・・・」
「いや、4本だ!!」
ルフィとサンジは先ほどからずっと、クレイオにどのような脚を付けるべきか討論している。
彼らの頭には“手術が失敗する”という発想は無いのだろうか。
「なぁなぁ、クレイオはどんな脚が欲しいんだ?」
「成功するかどうかも分からないのに、どのような脚が欲しいかなど考えるだけ無駄だ」
クレイオがそう答えると、ルフィは眉間にシワを寄せて口を尖らせた。
「お前、フランキーとチョッパーが失敗するって思ってんのか?」
「だって成功率10%でしょ」
「なら大丈夫じゃん!」
たとえ成功率0%でも己の信念のためなら、どのような困難にも立ち向かう船長。
彼にとって“成功率10%”はかなり希望的数字なのだろう。
いや・・・そもそも彼にとって“成功率”という数字はまったく意味を成さないのかもしれない。
「おれの仲間がやるんだ、信じろ!!」
その言葉は何も、クレイオを励ましているのではない。
ルフィにとって当たり前のことであり、決して揺らぐことのない自信からくるものだった。