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【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第10章 機械仕掛けの海賊はブルースを歌う(フランキー)




騒がしい麦わら海賊団の船室。

ガイコツの音楽家はバイオリンを奏で、コックは鼻の下を伸ばしながら女性達に紅茶を配っている。
ダンベルで絶えず筋トレをしている剣士、フランキーの変身を囃し立てる船医達・・・

それなのに不思議と先ほどからどこか緊張感が漂っているのは、今ここでフランキーと女海兵の勝負が始まらんとしているからだろう。
フザけながらも張りつめた空気を作る・・・それができるのは、彼らが一般人には想像もつかない過酷な戦いの場に身を置いてきたからだ。


「何故・・・今日会ったばかりの・・・しかも海兵である私に何故、そのような申し出をする?」

「申し出? 勘違いするなよ、オネーチャン」

フランキーは仲間達のリクエストに応えて声色を変えたり、肩からロケット砲をのぞかせたりしながらも好戦的な口調で続ける。


「これは同情心や善意から言っていることじゃねェ。さっきも言った通り、おれ達からお前に対する“宣戦布告”だ」

「・・・どういうこと・・・?」

「“装着”する義足とは違い、身体そのものを作り変える。その痛みは脚が切断された時の痛みの比じゃねェ」


実際にサイボーグとなった人間が言うのだから、それは本当なのだろう。
それにここにはベガバンクの研究所のような設備が整っているわけでもない。

「なら丁度いい、おれ達に対するお前の憎しみと覚悟とやらがどれほどのものか、見てみるのも面白いと思ったわけよ」

フランキーはニヤリと笑って、クレイオを見据えた。


「おれはこれから、死んだ方がマシだと思うほどの痛みをお前に与え、自分の意のままに動かない身体に作り変える」


脚を失い、ただ憎しみしかないお前に残されたのは、冷たい鉄の心。


「その痛みはお前に死をもたらすかもしれねェ。意のままに動かない身体は、お前をただの人形にしちまうかもしれねェ」


このまま何もせずに鉄の心だけ抱えて死んでいくのか?
それとも、痛みに耐えて自分の身体を支配してみるか?



「これは、おれ達とお前の勝負だ」



ここに一丁の拳銃があったとしよう。


目の前には心から憎む敵。
お前はそれを手にして、引き金を引くことができるだろうか。

銃に込められるたった一発の弾丸が、お前の命と引き換えであると知ったとしても、引き金を引くことができるだろうか。





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