第10章 機械仕掛けの海賊はブルースを歌う(フランキー)
───新しい脚・・・すなわち義足か。
ここで言われなくとも、すでに海軍が支給すると申し出てくれている。
しかし、義足はあくまで失くした脚の“代替”であって、元のように動けるようになるわけではない。
長いリハビリを要するし、体重や筋肉の増減によって合わなくなれば新しいものを用意しなければならない。
結局は自立して生活できるようになるための補助でしかないのなら、海兵である自分には不要だと拒否してきた。
「今さら義足などいらない」
「義足ゥ? お前はおれをバカにしてんのか?」
フランキーは文字通り“鋼”の胸筋を大きく膨らませ、威圧感たっぷりにクレイオを睨んだ。
見ればさっきまで坊主だった頭には、いつの間にかリーゼントの形をしたフサフサの髪が生えている。
「おれが作るのは単なる補助器具なんかじゃねェ。“新しい肉体”だ」
筋肉や骨、果ては神経そのものを作る。
その言葉がハッタリでないことは、彼の姿を見れば分かることだった。
異常なほどまでに横に突き出した、まるで巨大な砲弾のような肩。
それすらも簡単に掴めてしまいそうなほど大きな手、皮膚と一体化した鋼鉄の膝はどう見ても生まれ持った形でないことは明らかで。
しかもそれらは義手や義足の類ではなく、“身体”として機能している。
「科学の力と肉体を合体させて人間本来の能力を拡張させる・・・そんな技術を持ってるのは、ベガバンクかこのおれしかいねェ」
サイボーグ。
生命体と機械を組み合わせた存在。
確かにバーソロミュー・くまなど、海軍にもそういった“人間”たちはいる。
しかしこの小さな海賊団の、一船大工にそんな技術があるというのか・・・?
すると、それまで他の仲間達とババ抜きに興じていたルフィがやってきた。
「信じられねェなら、フランキーに変身を見せてもらえよ! すっげェんだぞ!!」
「そう褒めるなよ、照れるぜ」
フランキーはそう言いながら鼻頭を押して、それまでリーゼントだった髪をモヒカンヘアーに変える。
その機能の必要性の有無はどうあれ、本当に変幻自在のようだ。