• テキストサイズ

【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第10章 機械仕掛けの海賊はブルースを歌う(フランキー)




「聞くが、オネーチャンはおれ達を捕まえてどうする気なのよ」
「も、もちろん裁きを受けさせるために連行する」
「そりゃ威勢がいいな。だが、どうやって?」
「どうって・・・」

流石に言葉に詰まった。
車椅子もない今の自分は、身体を起こしているのがやっとだ。
見た目は一番弱そうなチョッパーですら捕まえることができないだろう。

するとフランキーはその大きな身体と比べれば不自然なほど小さな頭を横に傾げた。

「おれ達を捕まえようとするのはケッコウなことだ。でも、“勝機”がねェんじゃ、それはただの虚勢だということがわからねェか?」

「勝機が無くたって、時には引けない戦いもあるでしょう?! たとえば───」

空になったスープ皿を舐めている麦わら帽子の男。
幸運にも生きているようだが、2年前、本当に勝機があってマリンフォードの頂上戦争に乗り込んだとは思えない。

「火拳を助けることなどできないのに、海軍の最高戦力に挑むことだって同じじゃない」

するとルフィがピクリと動き、顔を上げた。
ほんの少しだけ空気が変わったことを感じ取ったのか、それまで居眠りしていたゾロのいびきが止まる。

数秒の間を置いて、ルフィが口を開いた。


「おれはあの時、敵がどれだけ強ェかなんて考えてなかった。そんなの関係なかったからな」


逸らそうとしても逸らすことができない、真っ直ぐな視線でクレイオを見つめながら微笑む。

いつも前を走っていた兄を捕まえるぐらいの戦力なんだ、強いのは当たり前のこと。
それから救えなかったことを悔やむ自分も、責める自分も、もういない。


「おれはただ、絶対にエースを助けると決めていたからあそこに行ったんだ」


必ず助けると決めていながら、目の前で殺された。
それでも、たった一人の兄を奪った海軍の前でそのことを口にできるのは、彼が人並み外れた精神力の持ち主だからだろう。






/ 1059ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp