第10章 機械仕掛けの海賊はブルースを歌う(フランキー)
「私は海軍・・・どのような状況でも、海賊を捕えることが使命だ」
「まァ、そうだな」
フランキーの後ろでは、サンジとルフィによる温かいスープの攻防戦が繰り広げられている。
ゾロは居眠りをしているし、なんて緊張感のない海賊達なのだろうか。
「この軍艦島にお前達がいることを報告すれば、数分とたたないうちにこの船は包囲されるだろう」
「それができるだけ回復しているのなら、おれ達はお前を置いて出発する」
近距離から攻撃されても、このサニー号は砲弾をかいくぐれるだけの実力を備えている。
「ならば、今ここで私がお前達を捕える」
「それができるだけ回復していても、お前にゃ無理だ」
フランキーは決してクレイオをバカにしているわけではない。
ただ事実を述べているだけだったが、クレイオは掛けられていたブランケットを握りしめながら声を荒げた。
「私が脚無しの不具者だから、馬鹿にしているの?!」
ここは海賊船の中。
クレイオの味方は誰一人としていない。
なのに、自分に対する敵意どころか、警戒心すらも向けられていないことが、海兵にとってこの上なく惨めだった。
さすがにシンと静まり返った船内だったが、すぐにフランキーの溜息が静寂を割る。
「あのな・・・この船には身体の欠陥について何か言うような奴はいねェぞ。骨しか残ってねェ奴がいるくらいだからな」
すると後ろの方では、ガイコツが“フランキーさん、それ私のことですか!”と照れているかと思えば、長ッ鼻が“そいつもフランキーだけには言われたくねェと思ってるんじゃねェか?”とツッコミを入れている。
彼らの緊張感の無さは、余裕の表れなのだろうか。