第10章 機械仕掛けの海賊はブルースを歌う(フランキー)
“助かって良かった”・・・?
麦わらのルフィその言葉は、全身の血管に流れる血を一瞬で沸騰させるには十分だった。
直接的な原因が彼にあるわけでない。
クレイオの脚を奪ったのは、海軍大将の能力だ。
「ふざけるな!!」
それでも憎しみをぶつけるしかなかった。
いや、もはやそれは彼女に残った最後の“正義”だったのかもしれない。
「何故、私を助けた?!」
海賊に助けられるなど、辱め以外の何物でもない。
するとルフィはキョトンと首を傾げた。
「何故って? おい、フランキー、なんで助けたかって聞いてるぞ」
彼の興味はすでに、サンジがクレイオの為に持ってきた温かいスープに向けられている。
そして当のフランキーはというと、鉄の身体をゴキゴキと鳴らしながら何故そのような質問に答えなければならないのか分からないといった顔をしていた。
「そりゃおめェ・・・放っておいたら死んじまう命がそこにありゃ、助けるのが漢ってモンだろ」
「それが生きることを望まない命だったとしてもか?!」
「そいつが生きることを望んでいるのか、望んでいないのかは、助けてみなけりゃ分からねェことだろうが」
助けられる命は助ける。
それでも死にたいというのなら、その時は勝手にすればいい。
「けど、お前・・・“死にてェ”って奴のツラはしてねェぞ」
そう言って、フランキーはニヤリと笑った。
「ただ死にたい奴だったら、さっきおれ達の顔を見て“殺してやる!”とは言わねェはずだ」
かなり物騒なようだが、お前にはまだやり残したことがある。
その顔を見れば、おれ達がお前を助けたことは間違いじゃなかったことくらい分かる。
異形のサイボーグは確信に満ちた顔をしていた。