第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
「ルフィ」
船に降り立ったゾロは、真っ先にルフィの元へ向かった。
船の手すりに座って釣り糸を垂らしていた船長は、ゾロの声にクルリと首を回しこちらを振り返る。
その他の船員達も、少年の遺体を抱きながら登ってきたチョッパーのただならない空気を悟り、甲板に集まってきた。
「どうした、ゾロ」
「お前の許可を得たいことがある」
あらたまってそう言ったゾロに、ルフィ以外の一味全員が表情を変えた。
船長だけはそのまま、次の言葉を待っている。
「おれはこれから、この島を牛耳っているマフィアを潰しにいく。いいか?」
すると、後ろからナミが叫んだ。
「ちょっと何言ってんの?! この島のマフィアは強大よ!! 海軍だってバックについている」
「お前らに迷惑はかけねェ」
「チョッパーが連れてきたその子・・・死んでいるわよね?! いったい何が起こっているか、説明して!」
「・・・・・・・・・・・・」
ゾロが押し黙ると、ナミは困惑した表情でルフィを見た。
ウソップは狼狽え、サンジは黙って煙草に火をつけている。
ロビンは何も言わずに静かな瞳をゾロに向けていた。
「何とか言いなさいよ、ゾロ!」
しかし、ゾロは口を閉ざしたまま、船長に真剣な瞳を向けた。
「・・・・・・頼む、ルフィ」
説明はない。
だが、この島の“権力”を壊しにいくという。
数秒。
ゾロとルフィの間で沈黙が流れる。
そして、船長は麦わら帽子の下からニッと白い歯を見せた。
「ああ、いいぞ」
説明はいらない。
“権力”を壊したいというなら、壊してくればいい。
「お前の好きなように暴れてこい、ゾロ」
ルフィは、ゾロの願いを聞き入れた。