第10章 機械仕掛けの海賊はブルースを歌う(フランキー)
世界を滅ぼす力を持つ大海賊。
彼とその仲間が守ろうとしているのは、一人の“息子”の命だった。
息子が殺されるとあれば、白ひげの取った行動は親ならば当然かもしれない。
だが、どれほどの愛情によるものであれ、海賊である限りどんな行動も認められるべきではない。
海賊は悪、海軍に盾突く者は悪、正義の二文字を踏みにじる者は悪なのだから。
それなのに───
「戦えるか、ルフィ!!!」
「勿論だ!!!」
息を切らせながら湾頭に駆け付けたクレイオの目に飛び込んできたもの。
それを理解するのに、優に10秒はかかった。
「───弟なんだ、手出し無用で頼む」
何十人もの海兵が取り囲む円の中心にいたのは、炎に包まれながら背中合わせに立つモンキー・D・ルフィとポートガス・D・エース。
なぜ・・・処刑されるはずの罪人が、手錠も足枷もなくそこに立っている?
その瞬間、怒りで全身の血液が沸き立った。
「海賊は悪・・・海軍に盾突く者は悪・・・」
訓練ではそう教えられてきたし、そう信じてきた。
海軍が処刑を決定した人間が死を免れているのは、世界の秩序に対する冒涜。
「正義の二文字を踏みにじる者は悪だ!!」
自分の力が及ばないのは分かっている。
だけど、ここで海軍が敗れることがあれば、正義が悪に屈したことになる。
「それだけは・・・それだけは、絶対にさせない!!」
クレイオの正面、約100メートルの距離にいるのは麦わらのルフィ。
“ギア2”なる技で六式“剃”と同格の速さで海兵達を倒している。
「麦わらのルフィ・・・」
兄を救うために、新旧の七武海、革命軍、その他大勢の名のある海賊達を引き連れて戦場に現れた。
まだ若いのに、なんと恐ろしい男だろうか。
その彼を倒そうと刀を向けて走っていく海兵達と一緒に、クレイオも一歩を踏み出そうとした、その時だった。