第10章 機械仕掛けの海賊はブルースを歌う(フランキー)
翼の折れたカモメは何を想う?
お前の翼をもぎ取った敵を目の前にしながら。
その瞳で飛べない空を見つめることに何の意味がある?
お前の力は敵の前で無力に等しいと知りながら。
「・・・・・・・・・・・・」
消えることのない憎しみを抱えて地を這うことしかできない、憐れな鳥を抱き上げるのは鋼鉄の腕。
「フランキー・・・い、いったい、どうするつもりだよ・・・?」
「そりゃ決まってんだろ。助ける」
「だ、だだだだって、コイツ海兵だろ?! 殺すとか言ってたし・・・」
「関係ねェな」
“敵”だと知らなかったとはいえ、冷たい海の中からお天道様の下に連れ戻してしまったんだ。
「もう手を差し伸べちまったんだ。一度助けると決めたら、殺されたって助けるぜ」
───それが男ってモンだろ。
フランキーは気を失っている女をそっと床の上に寝かせ、チンピラのような笑みを浮かべた。
運命とは不思議なものだ。
海賊によって潰えた夢が、海賊によって掬い上げられることもある。
おそらく今、改造人間の声は届いていないだろう。
それでも翼の折れたカモメの目からは、一筋の涙が零れ落ちていた。