第10章 機械仕掛けの海賊はブルースを歌う(フランキー)
翼の折れたカモメは何を想う?
その瞳で飛べない空を見つめることに何の意味がある?
「チクショウ、コイツが邪魔だッ」
それは重石の代わりでもあったのだろう。
車椅子はしっかりとベルトで身体に固定されていて、うまく彼女を引っ張り上げることができない。
フランキーは力尽くでベルトを引き千切ると、彼女を抱えながら海面の方へ必死に水をかいた。
車椅子はといえば、その重みでゆっくりと暗い海底へ沈んでいく。
あと20秒、フランキーが遅かったら彼女も同じ運命だっただろう。
「ガハァ!!」
やっとの思いで浮き上がると、サニー号には水音を聞いて甲板に出ていたウソップがいた。
「フランキー!! どうしたんだよ!!」
「ウソップ、丁度良かった・・・ゲホッ・・・ハシゴを下ろしてくれ!!」
「な、なんだソイツ?!」
フランキーが抱えている人間を見て、ウソップはギョッとした顔をした。
「おれも分からねェが、あの崖から飛び降りたらしい! コイツはおそらく、自力で上がることができねェ!」
「わ、分かった!!」
ウソップが下ろしてくれた縄梯子で何とか船に上がると、助けた人間の姿を見て二人は言葉を失った。
「脚が・・・ねェ・・・」
年齢はロビンと同じぐらいだろう。
落ちた衝撃で気を失っている彼女の両脚は、左脚は付け根から、右脚は膝の下からザックリと無かった。
「おい、フランキー・・・見ろよ、これ・・・」
さらに驚くことに、彼女が着ている衣服の袖口には、カモメの刺繍。
それはこの身投げ者が海軍の関係者であることの証だった。
「お前・・・海兵を助けちまったのかよ・・・?!」
ウソップが青ざめながら呟くと同時に、女がゆっくりと目を覚ます。
そして傍にいたフランキーが視界に入ったのか、小さく口を動かした。