第10章 機械仕掛けの海賊はブルースを歌う(フランキー)
さすが、海軍が“中継地点”として選んだ場所だ。
この辺りの海は比較的、潮の流れが穏やかで、小さな人工島でもウォーターセブンのように大波に飲まれることはないだろう。
これからどのような冒険が待っているか分からないんだ。
何があっても耐えられるように船を万全の状態に保っておくのは、船大工の務め。
「ン~ンン~、アウ!!」
目立たない崖下にサニー号を停め、フランキーが鼻歌交じりにトンカチを振っていると、ふと甲板の芝生に小さな影が落ちていることに気が付いた。
「ん?」
見上げると、太陽の光を遮るように一羽のカモメが旋回している。
「カモメ?」
見慣れない海賊船を警戒しているのだろうか。
それともフランキーに何かを訴えているのだろうか、カモメは頭上をゆっくりと回るように飛んでいた。
そして一枚の真っ白な羽根を落とすと、軍艦島の方に向かって飛び去って行く。
「・・・?」
それを目で追ったのは、本当に偶然だった。
カモメがそこにいたのも、そのことに気が付いたのも、偶然だった。
だがそれが、一人の人間の運命を変える。
飛び去って行くカモメ。
舞い落ちた羽。
サイボーグの目を強く刺す太陽の光、その先に。
海面から数十メートルはあろうかという崖の淵に、カモメよりも遥かに大きい影が揺れていた。
「ありゃ何だ・・・?」
サニー号からは逆光になって、その影の正体がよく分からない。
四足歩行の動物にも見えるし、小さな乗り物のようにも見えた。
そこが断崖絶壁だということに気づいているのだろうか、その影はだんだんとこちらに向かって大きくなっていく。
「おいおい、このままじゃ落ちるぞ!!」
フランキーは慌ててウソップを探した。
彼のスコープならあの影の正体が分かるかもしれないと思ったからだ。
しかしウソップは丁度、自分の武器の手入れをするためにウソップ工場に籠ってしまっている。
フランキーがもう一度崖の方に目を向けると、パラリと崖の上から小石が落ちてきた。
それは間違いなく、あの影が落としたもの。
そして、次の瞬間───