第10章 機械仕掛けの海賊はブルースを歌う(フランキー)
「諦めるんだな。あいつは二年前と何も変わっちゃいねェよ」
チョッパーとブルックを従えて意気揚々と操縦室へ走って行ったルフィにナミが頭を抱えていると、ゾロが声をかけてきた。
もともと腹の据わった男だったが、再会してからは貫禄のようなものさえ感じられる。
しかし、“上陸”という言葉で上機嫌になってしまうあたり、やはりこの男も“麦わらの一味”なのだろう。
「まったくもう!! 何かあったらアンタ、私を一番に守りなさいよ!!」
「おれに指図するな」
“ゾロ君、おれのことも守ってね”と泣きついてくるウソップを引っぺがしながら、ゾロは目の前の軍艦島を見据えた。
やはり海軍の“匂い”がする。
ロビンも微笑んではいるが警戒心を強めているし、サンジも煙草に火を付けながら攻撃を仕掛けてくる気配がしないかどうかを探っている。
「・・・イザとなったらあそこにいる海兵、全員たたっ斬ればいいだけの話だ」
「ちょっとゾロ、物騒なこと言うのはやめて!! 穏便に、誰にも気づかれずに、出航するのよ!!」
ナミが金切り声を上げていると、船室で作業していたフランキーが出てきた。
「島に上陸するみてェだな、丁度いい」
肉体を鋼鉄に変えた船大工は、トレードマークのサングラスを持ち上げながら軍艦島を見て口の端を上げる。
「燃料のコーラを補充しておきたい。お前ら、調達してきてくれ」
「お前はどうするんだ、フランキー」
「おれは今のうちに船の整備をしておく」
ゾロは“任せろ”と頷いたが、この男が一人で島を歩き回れるわけがない。
結局、フランキーと一緒に船に残った方が得策と考えたウソップを除き、麦わら海賊団はルフィ・チョッパー・ブルック・ロビンの探検組と、ゾロ・サンジ・ナミの物資調達組に分かれることになった。