第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
そして、ゾロはクレイオの方に顔を向けた。
「クレイオ」
その瞬間、クレイオの背筋に冷たいものが走る。
自分を見つめる海賊は、これまで見たこともないほど冷たく・・・残忍な瞳をしていた。
「今夜も・・・おれがお前を買う」
「ゾ・・・ロ・・・?」
「言っとくが、金はねェ。だから、別のモンで払う」
禍々しいほどの殺気。
昨晩、自分を優しく抱きしめてくれた人と同一人物とはとても思えなかった。
「いいか。“客”が戻るまでに自殺したら・・・冥途の向こうまで追いかけ、お前をぶった斬るからな」
ゾロは、普通の人間とは一線を画す“海賊”。
忘れていたその恐ろしさを再認識させるほど、凶悪で非情な眼をしていた。