第30章 SWEET PEA
こんな雰囲気になりたかったわけじゃない。
こんな事言いたかったわけじゃない。
だけど、何でわかってくれないの?
「・・お節介かもしれねぇが・・・」
沈黙した私達を気遣ってか、グラスを磨く手を止めず こちらを見ないでキッドが話しかけてきた。
まるで、独り言を装う様な感じだ。
「・・言ってみろ」
ドフラミンゴの促したキッドは口を開いた。
「お二人ともちゃんと気持ちを言った方がいいすよっ。
これじゃ、いつまで経っても何も変わりません」
『「・・・」』
気持ちは、言った。
ちゃんと辞めて欲しいと言ったのに、これ以上何を伝えればいいの?
「気持ちなら今、言っただろ。
お姫さんはお姫さんだからと・・」
「いや・・、何というかその気持ちの・・・
えっと・・・理由とか・・?」
理由?
理由って・・・
思わずドフラミンゴを見ると、ドフラミンゴも私を見ていた。
今日初めて合った視線。
思わず視線を逸らす。
突然の事で頬に赤みが差しそうだった。
「おーい、お二人さん聞いてんの?」
『聞いてる!聞いてる!!』
そう、確か・・・
「理由だよ」
そう、理由。
ニヤニヤ私を見つめるキッドの笑みは気になるところだが、良いアドバイスを貰ったのは確かだ。
気持ちを伝えれるだけで、何故そう思ったのかドフラミンゴには言っていない。
それを言わないで理解して欲しいと望むのは勝手過ぎる。
『えっと・・
私はドフィと対等でいたいの、うん、それが私の理由』
そう言ってドフラミンゴを伺い見る。
対等でいたい。
どちらかの重荷になるのではなく、同じでいたかった。
「・・・」
唖然とはちょっと違う、見た事がないドフラミンゴの表情。
『・・ドフィ?』
「いや、何でもねぇ」
そう言って顔を隠し、また深いため息を吐く。
ダメだったか・・と思った時
「お姫さんの言いてぇ事はわかった」
『本当?!』
「あぁ・・努力はする」
努力はするって・・
でも、まぁ多少だが歩み寄れたのは確かだ。
嬉しかった私は、乾杯しようとグラスをドフラミンゴに近づける。
万遍な笑顔の私とにこやかに笑うドフラミンゴ。
グラスの高い音が私達を包んだ。