第26章 ALLIUM
どうにか誤解を解こうと立ち上がろうとする私の手を引っ張り、座らせるドフラミンゴ。
『離してッ』
「おい、クロコダイル」
前屈みになり、下から睨み付けるドフラミンゴ。
私の言葉は耳に届いていない。
「何だ」
そんなドフラミンゴに負けず劣らず、クロコダイルも上から見下ろす。
「てめぇが俺に苛立っのはどうでもいい。
だが、お姫さんにあたるのはよせ」
「お前に言われる筋合いはない」
「だったら言わせるじゃねぇよ。
お姫さんはな・・は簡単に吹っ切れてねぇよ」
『・・・』
「吹っ切れたのも2日前だ。
の気持ちをてめぇが勝手に決めるなよ」
「・・・」
これほど、潜めた声で脅かす様な響きのある話し方は初めてだ。
私に放たれた言葉じゃないのに背筋が凍る。
恐る恐る見上げたクロコダイルと視線がぶつかった。
「ーーっっ、何で泣いてるんだ」
『えっ?・・あれ?やだ、ごめんなさい』
知らぬうちに溢れていた涙。
ドフラミンゴが怖かったわけじゃない。
クロコダイルの言葉に傷付いたわけじゃない。
だけど、急に溢れた涙を止められない。
「・・お姫さんBARに来たら泣くのが癖か?」
『違うッ、違うんだけど・・』
「たくっ・・悪かった。
昨日の今日だからな、涙腺が弱ってるだけだ。
気にするな、泣く分泣け」
私の身体を自分に寄りかけさせるドフラミンゴ。
私はその胸に顔を鎮めた。
トクトクとリズム良く鳴る心音が余計に涙を溢れさせる。
泣くつもりなんてなかった。
どうしてだろう、今までどうやっても泣かなかったのに泣いたらいけない場所で意思とは関係なく出てきてしまう。
「・・悪かった」
微かに聞こえた謝罪の言葉。
クロコダイルの声を聞き、顔を上げた先にはもうその姿はなかった。
「気にするな」
『社長は悪くないのに・・
私が泣いたから・・』
「俺はあいつの気持ちがわかる。
だが、今優先してぇのはお姫さんだ」
その言葉に私はまた、胸に縋った。
強くはないけど、弱くはなかったはず。
1人で立ち直れたはず。
なのに、今はそれが無理。
このぬくもりから離れられない。
オマケ→