第26章 ALLIUM
リムジンは、あの事故以来数回乗る機会があったが毎回まだちょっと緊張してしまう。
順調に空港へ向かう車。
私は、ニコ・ロビンのデータをおさらいし粗相がない様に頭に入れる。
有名なハープ奏者。
数多くのコンクールを総なめした実力派の帰国子女。
ハープか・・
まさに、お嬢様だな。
私はロビンを出迎えるためにゲート前で待機した。
人混みの中、ハッキリわかる人物。
写真を見なくてもそのオーラと立ち振る舞いに見間違う事はない。
お付きの人だろうか、2人の男女を連れていた。
『初めました、crocodile corporationの副社長と申します。
ニコ・ロビン様お待ちしておりました』
深々と一礼する私を一瞥したロビンは、辺りをキョロキョロと見渡した。
「Are you kidding?! 」
(冗談でしょう?!)
えっ?
「It is such you only?」
(あなただけなの?)
『・・P、Pick-up is the only I。
President shall call on you later on』
(出迎えは私だけです。
社長はのちほど伺います)
私の返答を聞いたロビンは1つため息をつき、歩き出した。
慌てて追いかける私にロビンはふと、立ち止まり尋ねてきた。
「あなたは、クロコダイルの何かしら?」
えっ?
日本語?!
英語で聞かれ、咄嗟に英語で返していたが帰国子女のロビンが日本語を喋れるのは当たり前。
『部下です』
戸惑いながらも答える私に、ロビンは目を細め紅く塗られた唇を吊り上げた。
「私の出迎えにたった1人なのは初めてよ」
喋りながら歩き出すロビン。
予想していたので出遅れずに済んだが、居心地が悪い。
『すみません』
「別に構わないのよ。
そっちの方が何かと楽だし、予定通りに進めそうだわ」
予定通り?
こっちの予定ではこのまま真っ直ぐホテルへ直行だが、ロビンは何かあるの?
『あっ、車はこちらです』
待たせていたリムジンを指差し、案内する私にロビンは思いもしない事を言い出した。
「Paula!Galdino! Get into the car」
(ポーラ!ギャルディーノ!車に乗って)
ロビンの言葉にお付きの2人が荷物をリムジンに乗せるとポーラと呼ばれた女性が私に耳打ちしてきた。