第25章 NIGELLA
『どうして連絡くれなかったんですか?
どうしてゾロを迎えに寄越したんですか?
どうしてここに呼んだんですか?
どうして・・・?』
言いたくなかった、吐き出したくなかった。
こんな嫌な感情をぶつけるべきではない。
「どうして敬語なんだ?」
『そんな事!私が先に聞いているんです』
「連絡ならお姫さんも寄越さなかったじゃねぇか。
ゾロでは不服だったか?」
『・・不服、じゃないと思う。
だけど、ドフラミンゴさんは意地悪です。
ここに呼んだのも意地悪です』
居心地が悪いBAR。
ふかふかなソファーに綺麗な夜景を見てそう感じるのは私だけだろう。
「褒め言葉だな、フフフ」
『褒めてなんかいません』
「今日のお姫さんはご機嫌斜めらしい。
俺が何と言えばお姫さんは納得するんだ?」
そんなの・・
私が知りたい。
「言いたい事は言えと言った。
言った分は受け止めてやる。
だが、言ってねぇ事で応えを俺に求めるな」
今の私にとって、連絡が無かった事もゾロが迎えに来た事もこのBARの事も本当はもうどうでもいい。
私を乱しているのは、ゾロへの想いドフラミンゴへの気持ち。
ドフラミンゴが無償で私に与える安心感が私を乱している。
乱しているのにゾロへの想いをどうにかしたくて、私はその安心感を求めてしまっている。
『わかんない、です。
私はどうしたらいいのか・・
このままドフラミンゴさんに甘えて吐き出してもいいのか・・
わかんないんです』
沈黙が落ちる。
静かに鳴るBGMのピアノが辺りに溶け込む。
考え込んでいる様子のドフラミンゴ。
そこへ、ボーイがカクテルを持って現れた。
「お待たせいたしました。
アレキサンダーです」
そう言ってドフラミンゴの手元へ置く。
「こちらは、バーテンからお客様へお作りしたカクテルです」
私の前に置かれるライムが入ったカクテルグラス。
それを置くとボーイは、一礼して席を離れた。
『バーテン・・』
「モスコミュールだな」
『アレキサンダーのカクテル言葉は、完全無欠。
モスコミュールは・・・』
喧嘩をしたらその日のうちに仲直りする
謝罪の意味が込められたカクテル。