第25章 NIGELLA
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「遅かったな、もう来ないかと思ってた」
ボーイに案内された席にドフラミンコはいた。
ソファーに座り、最上階からの夜景を見渡せる1番良い席。
周りには観葉植物があり、他の客から見えにくくなっていた。
『遅くなってすみません』
言いたい事があった。
でも、言えなかった。
もう、そんな心境ではない。
『お待たせしてすみませんが、体調が優れないので失礼させていただきます』
ソファーに座らず、立ったまま告げる。
返事も聞かず去ろうとした私の腕を掴むドフラミンゴ。
『・・離して下さい』
「・・まだ必要なのか?冷水シャワー」
『必要じゃないです』
「そうか?必要だと顔に書いてあるがな・・
まぁ、座って1杯だけでも付き合え」
腕を引っ張られ、倒れ込むようにソファーに座った。
何を飲むか聞くドフラミンゴを無言で見つめる。
今は、お酒を飲む気にはなれない。
注文を受けたボーイが立ち去るのを見届け、ドフラミンゴは私に向き直った。
「予想以上の顔だな、ククク」
『・・いつもの顔です』
「ゾロから告られるだろうと踏んでいたが・・
その様子だと違うらしい・・何を言われた?」
貴方の事です、なんて口が裂けても言えない。
『・・・』
「言う気はねぇのか・・
ゾロも意気地がねぇな、好きなら取られる前に告ればいいものを・・・」
『離して下さい。
もう今日は飲む気分じゃないんです』
「・・一杯だけ付き合え」
甘えられない。
甘えたらいけない、この人に・・
「何があった?」
『・・・』
「お姫さん?」
『言いたくありません』
言えない。
ぐちゃぐちゃなこの気持ちを言えない。
「・・言え。
言わなきゃ誰にも伝らねぇし、わかってもらえねぇぞ」
どうして聞こうとしてくれるのだろう・・
最悪な態度をとってると、私自身でもそう思うのにドフラミンゴは気にする事なく真剣な視線を向けてくる。
『・・もう、ドフラミンゴさんに相談出来ません』
こう言うのが精一杯だった。
「、言えと俺は言っている」
『!!』
狡い。
狡いよ、こんな時に限って名前で呼ぶなんて・・・
ドフラミンゴの言葉を拒否なんて出来ない。