第25章 NIGELLA
「いつからだ?
いつからオーナーとタメ口で話すぐらいの仲になったんだ」
『えっ?』
空気がガラリと変わった。
ゾロの言葉の端々に苛立ちが垣間見える。
「いつからなんだ?」
『いつって・・
説教されてから、かな?』
いつからだろう。
敬語を使わなくなっていた。
ゾロと付き合ってた頃は敬語だったはずだし・・
ハッキリとは思い出せないが、あの日ホテルで話した時にはもう敬語は使ってなかったような気がする。
「説教・・?」
『うん、怒られたのドフラミンゴさんに。
お姫さんはいつまでもお姫さんだなって・・
あの時ヤケになって怒った気がする。
喧嘩とかじゃないけど、少し言い争ったって感じかな・・』
「・・そうか」
順調に進んでいた車がホテルのロータリーへと入った。
ここは毎回ドフラミンゴが使うホテル。
「ここの最上階にあるBARにいる」
『えっ?最上階の・・BAR・・・・』
何で?どうして?
知らないわけじゃないはず。
「どうした?」
不審に思ったゾロが顔を覗き込んでくる。
『いや、あの・・その・・・・』
行きたくない とは、言えない。
ゾロの仕事は私をここに送り届ける事。
ドフラミンゴが待ってる。
行かなきゃいけない状況だけど、BARには行けない。
「・・・言えねぇのか?」
えっ?
何でそんな顔をするの?
私を見つめるゾロの表情は、歪んでいた。
「オーナーには何でも言えて俺には言えねぇんだな」
『ゾロ・・?』
「付き合ってた頃、お前と俺は喧嘩どころか言い争いすらした事なかったな」
『だって、それは仲が良かったからで喧嘩する理由は無かったよ』
「俺に言いたい事はあっただろ?
女相手の仕事してたんだ、文句の1つはあるはずなのにお前は何も言わなかった」
『だって!それは・・・』
ホストがゾロの仕事だから。
だから、私も理解したかった。
「別れる時だって、言い争いすらしてねぇ。
他の女を抱いた俺をお前は1度も責めなかった」
『・・・だって・・』
「・・役不足だったんだろ?俺は・・・
お前は、オーナーといた時の方が素を出す。
食事会の時に気付いたんだ。
俺に見せた事ない表情をしてんだよ。
お前は、オーナーの前じゃありのままのお前でいたんだ」