第23章 TRUMPET VINE
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深夜の繁華街。
足早に目的地まで急ぐ。
「ーーぁっ、んんっーーー」
『!!?』
微かに聞こえた漏れる女の声。
これは・・
考える事なく直感する。
あれだ!と。
こんな所で辞めてよと、思いながら私は歩みを速めた。
「あっち向け」
「ぁっ、ここでっ・・やぁ・・・ぅぅん」
近くなる声。
この先だと思い俯きながら通り過ぎようとした。
そんな私の耳に信じられない言葉が聞こえたんだ。
「・・やっ、ぅぅん・・・ゾロぉっ・・激しッ」
『!!!?』
他人の空似ではないけど、似た名前だろうと思おうとした。
だけど・・
「奥が好きだろッ」
この声は・・
囁く様に掠れた色っぽい声は・・・
通り過ぎようとしたその時、私は思わず目を向けてしまった。
薄暗いビルの狭間の奥を、以前ゾロと初めてキスした場所を。
ーガチャンー
持っていたバッグがアスファルトに落ちる。
慌てて拾った私を呼ぶ声。
「ーーッッ!?!」
あの場所から呼ばれた。
逃げなきゃ。
逃げなきゃ。
これは見たらいけない事だった。
これは知ったらいけない事だった。
私は、走った。
追いつかれたらいけない。
聞きたくも無い。
知りたくも無い。
タイミング良く停まっていたタクシーへ飛び乗る。
『駅!駅に行ってッ!!』
ドクバクと激しく動く心臓。
走ったせい?アノ現場を見たせい?
わかんない、わかんないけど・・・・
心を落ち着かせる暇なく、鳴り始めた携帯。
見たくても誰なのかわかった。
こんな時間にこのタイミングで掛けてくる人なんてゾロしかいない。
『・・もしもし』
【!?俺ッ・・】
『別れよう』
【!!!】
ゾロが話す前に私は言い切る。
『例えあれが本気ではなくて、仕事だとしても・・
私はもう無理です。
ごめんなさい、別れて』
涙は溢れなかった。
溢れなかったんだ。
【・・あの野郎と・・・クロコダイルと何があった】
ゾロ・・
『社長とは何も無い』
【だったら何でだ。
アレは仕事だ。愛は無い。
俺はだけだ】