第6章 2つ言っておくぜ
そうリコが口を開いたのは、購買の人だかりがそろそろピークを迎えた頃だった。
下の騒音が風に乗って屋上にいる紫苑たちのところまで聞こえてくる。
「率直に言うけど、あの時何をしたの?」
あの時とは試合中のことを指す。リコの目は誤魔化されなかった。紫苑が試合中に何かをしていたこと。それはごく些細なことで、気付かれるはずもなかったものである。
「聞こえが悪いかもしれないけど、知る権利があると思うの。正直に、話してくれないかしら?」
「自分で言うのは少し気が引けるって言うか…でも一つ言わせてもらうと、私結構人間観察得意だと思うんです。相手が何を考え、どう動くか。そこまで知ってしまったら、次何をしようとしているのか知るのは簡単です。」
真剣そのもののまなざしからは嘘は見えない。リコが感じた違和感はこのことだった。