第2章 黒子はボクです。
リコは意味深げにニヤけると、シャツを脱いだ新入生を横一列に並ばせ、その前をゆっくりと歩いた。目が全体を観察するように鋭く光る。
紫苑も少し離れた所から同じように見ていた。
やはり、思った通り…
リコ「…君!ちょっと瞬発力が弱いね。反復横とび50回行くのに20秒くらいでしょう。バスケやるならもうちょい欲しいかな。」
「は、はぁ…」
リコ「君は体かたい。」
「あ、あってる…」
「どういうことー?!」
リコの的確な私的に全員が驚いて感嘆の声を漏らす。
「てか、体見ただけで…」
日向「あいつの父親はスポーツトレーナーなんだよ。」
驚きを隠せない彼らに日向が説明に入る。
紫苑の目は今度は日向にくぎ付けになった。
紫苑「(この先輩…変なの。おもしろい性格してる。)」
日向「データをとってトレーニングメニューを作る。子供のころからその仕事場で、肉体とデータを見続けているうちに見に着いた特技。体格を見ればあいつの目には身体能力がすべて数値で見える。ま、監督たる由縁はそんだけじゃないけどな。」
リコの観察はまだまだ続く。紫苑はそっとリコの隣に駆け寄るとリコに続き、自分なりの観察結果を口に出した。
紫苑「…彼はどうやらほかの人よりも視野が狭いようです。集中すると一点にしか目がいかないので、全体を見る練習をした方がいいでしょう。…ですが、先輩たちの中にかなり視野の広い方…コートをいろんな面から見れる方がいるので、作戦によってはメリットになるかもしれません。…今の、あってますよね?」
小首を傾げてニコっと笑顔で問えば、紫苑に指摘された生徒は軽くうなずき、リコや日向たちなど先輩らは呆けた。
リコ「(私たちまで見るなんて…何、この子…)」
うすら冷や汗をかきながら、生唾を飲み込む。紫苑のその目は不思議に、紫と緑の左右非対称の色だった。
紫苑は小さくクスリと笑うと、リコにだけ聞こえる声で言った。
紫苑「読んでなんていませんよ先輩。」