第2章 黒子はボクです。
しばらく時間が止まったように思えたが、リコは気を取り直すと紫苑に向かって微笑みかけた。
リコ「えぇ。紫苑ちゃんの言う通りよ。」
紫苑「よかった!…先輩。彼…見ましたか?あの人。」
紫苑が指さしたのは、紫苑が今までずっと見ていたほかの生徒とは風格の違うやつ。
紫苑「火神大我。中学は…アメリカかな?ってことはストバスね。」
火神「てめぇ…なんで…?」
いぶかしげに紫苑を見下ろす火神に紫苑はひるむことはなく、むしろ感心に近い態度で目を動かしていた。
リコも負けじと火神に目を向けると、その目には驚くべき数値が浮かび上がった。
ずっと何も言わないリコにしびれを切らしたのか、火神の挑発的な声が降ってくる。
火神「なんだよ。」
リコ「(ナ、何これ…全ての数値がずば抜けてる…こんなの高一男子の数値じゃない。しかも伸びしろが見えないなんて…生で初めて見る、天賦の才能!!)」
紫苑「ね?先輩。すごいのが見えたでしょう?」
リコ「(この子は服の上からでも見えたっていうの…?やはり、今年の一年はすごい。なんてたって、帝光中出身が二人もいる…それにしても、この子の目は何?)」
渦に巻き込まれるかのような感覚。紫苑はじっと見られても気にしないかのように同じように笑顔でリコを見返してくる。その態度は別にバカにしているわけでもなく、むしろ役に立って嬉しいと言う気持ちの表れだ。
日向「監督!何やってんだよ!」
いつまでたっても動かないリコに日向が叫ぶ。はっとして気がつくと、リコは急いで手元のボードに目を走らせた。
リコ「え?あっと、御免。」
日向「全員見たっしょ。火神でラスト。」
紫苑「(あら。黒子っちまた…)」
リコ「あ。そう…?黒子君ってこの中にいる?」
日向「あぁ、あの帝光中の…」
呼びかけて当たりを見まわしてもまったくいる気配がなく、リコは頭に手をやった。
リコ「(あんな強豪にいたんだから見たらすぐ分かると思うんだけど…)今日は休み見たいね。いいよー!じゃ、練習始めよー!」
と、手を挙げて合図をしたリコはそこで初めて目の前に誰かが立っているのに気がついた。
「あの、すみません。黒子は僕です。」