第5章 逆襲よろしく!
「まさか夢にも思わなかったっスね。黒子っちとこんな風に向き合うなんて…」
「僕もです。」
「一体どういうつもりか知らないっスけど、黒子っちに俺を止めるのは無理ッスよ!!」
いとも簡単に黒子を振りきると、次に目の前に立ちはだかったのは火神。
「違うね。止めるんじゃなくて…」
「取るのよ!」
次の瞬間、腕が軽くなったような気がした。ボールが弾む音。見ると、今まで持っていたボールは黒子に後ろからスチールで取られていた。
「やったぁ!」
あまりにもあっさり成功した喜びに紫苑は声を上げる。本当はこういうバスケがしたかった、という思いがいまさらながら溢れだして思わず頬を緩めた。
「火神でひるんだ一瞬をバックチップで取るなんて、白華さんすげぇ!」
「黄瀬っちがどれだけすごい技で圧倒しようがもう関係ない。抜かせるのが目的。それならば、手はいくらでもある。」
そうこうしている間に、誠凛がシュートを決め歓声が上がる。
「くっそ!ただのダブルチームの方がまだましだぞ!」
「(あの影の薄さで後ろから来られたら、いくら黄瀬君でも気付かないでしょう!)」
「そんなの抜かなきゃいいだけじゃないっスか。誰も言ってないっスよ!3Pがないなんて!」
再び黄瀬のマークに着いた黒子。しかし、黄瀬は進むことなくボールに手を添えると高く掲げた。
「3P?!黒子じゃとどかねぇ!」
「甘い!」
そこへ飛び込んだのは火神。黒子の頭に手を添えそれを支柱にしてはたく。
「(やられた!平面は黒子っちが、高さは火神がカバーするってことっすか!)」
「(外からのシュートはモーションが掛かる。その分、隙ができる。)」
紫苑の脳裏にある人物がそう教えてくれた時のことがフラッシュバックする。彼はその時、どうその欠点をカバーすればいいか相談してきたので、皆で楽しく話し合ったものだ。それももう、ないかもしれないけど…
なんて一人違う方向へ行っているとリコの叫び声が聞こえた。
「黒子君!」
ハッとして目の前のコートに目を走らせる。
「レフリータイム!」