第5章 逆襲よろしく!
「黒子!」
動揺する黄瀬。黒子の額からは赤い筋が流れ出ていた。ゆっくりと起き上がると日向が急いで駆け付ける。
「大丈夫か黒子!」
「…ふらふらします。」
「救急箱!持ってきて!」
「…は、はい!」
急いで準備してあった救急箱を取り出し、ベンチへ戻る。一見素早い反応、だが、紫苑は視界が歪んで見える気がした。確かに、バスケは激しいスポーツだし、スポーツには怪我がついてくるもの。そんなことは百も承知。それでも楽しいからバスケとは関係を保ってきた。…あの時だって皆がいたからやってこられた…
「紫苑ちゃん。」
鋭く声をかけたリコが紫苑を振りかえると、紫苑は救急箱を抱えたままうつむきがちにただ立っていた。はっとして急いで中身を取り出し、的確にリコに手渡して行く。
その視線が動揺を隠せていないことはその場にいた全員がはっきりと目にした。
「…どうする。」
「黒子君はもう出せないわ。残りのメンバーでやれることをやるしかないでしょう。」
「やれることって!?」
「黒子いないときつくね?」
「オフェンスは二年生主体で行こう。離されるわけにはいかないわ、早いけど勝負どころよ日向君。」
「あぁ。」
「黄瀬君に返されるから、火神君オフェンス禁止。ディフェンスに専念して。全神経を注いで黄瀬君の特典を少しでも抑えて。」
「そんな!それで大丈夫なんですか?!」
「大丈夫だって。ちっとは信じろ。」
「でも!」
なおも不安そうに言い募る火神に日向のピンクの訳の分からないオーラが放たれる笑顔が向けられる。
「大丈夫だっつってんだろ。だぁほ!たまには先輩の言うこと聞けや、殺すぞ。」
笑顔で暴言を吐く日向に流石の火神も気押される。ホイッスルが響きレフリータイムが終わったことを示す。
スコアは34対39
「…ったくいまどきの一年はどいつもこいつも…もっと敬え!先輩を!!そしてひれ伏せい!!!!」
「スイッチ入って本音漏れてるよキャプテン。」
暴言をこれでもかと吐きながらコートに戻る日向の後ろ姿を驚いて見つめる火神に伊月は振り返った。
「気にすんな。クラッチタイムはあぁなんの。…とりあえず、本音漏れてる間はシュートそうそう落とさないからオフェンスは任せて、お前はディフェンス、死に物狂いで行け!」