第4章 勝てねぇぐらいがちょうどいい
「止まるな!足動かせ!」
日向の声がコートに響く。
「キャプテン。」
いきなり後ろから声が聞こえたので、日向は思わずこけそうになった。
「またいきなり…そして、何故俺に言う?!」
「タイムアウトが欲しいです。ちょっと今のハイペースは体に優しくないです。」
「え?何その軟弱発言。」
「あと、火神君を一度クールダウンさせないと。火神君がむきになって挑めば挑むほど、黄瀬君はそれ以上の力で返してくる。今のままじゃ、追いすがるのが精いっぱいでじり貧になります。」
真剣に言う黒子を見ながら、日向もその通りだと思った。
「(いつもより、饒舌だな。俺が考えてる以上にヤバい?)」
「きっと紫苑さんも同じことを思ってるはずです。」
その言葉に審判の方を見ると、黒子の言った通りリコがタイムアウトを申し出ていた。正直、リコも紫苑も同じことを思っていたが、まさか、ここまで彼らの意思が繋がるとは驚くしかない。
「(…らしいな、監督も同じこと考えてる。)」
「誠凛、タイムアウトです。」
皆ベンチに戻るなり、座り込み紫苑の差し出すボトルをただ奪い取るようにして口に運んだ。紫苑は忙しくタオルやら何やらを渡しながら、皆の疲労状態に顔をしかめた。