第4章 勝てねぇぐらいがちょうどいい
ホイッスルが鳴り響き、ボールが高く上がる。ジャンプボールを制したのは、海常。笠松は指を一本立てるとドリブルをしながら歩いた。
「よし!一本、きっちり行くぞ!」
余裕ぶちかましている暇などない。先に動いたのは誠凛。黒子が笠松のボールをカットしたのだ。
「何?!」
誰もいなくなったコートを走りながら着々とゴールへ近づく。後ろから笠松と早川が追いかける。
「どっから来やがったこいつ!」
黒子に追いついた笠松はふと、にやけた。
「(こいつ…遅せぇ。)」
右から来た笠松に目もくれず、黒子はただ前を見ている。止められると思った瞬間、ボールは黒子のもとにはなかった。
後ろから来た火神にパスを出し、そのままダンクを決める。
そのあり得ないパス回しに思わず開いた口がふさがらない。紫苑は小さく笑うと頬杖をついた。