第4章 勝てねぇぐらいがちょうどいい
部活が始まったばかりであろう時間帯。いたるところから掛け声が聞こえる。
「此処っスよ。」
案内された体育館に着くなり、一同は目を見開いた。真ん中には緑のネットがひかれ、向こう側のコートではバスケ部が練習をしている。
「…片面…でやるの?もう片面は…練習中?」
リコは腕を組むと眉をひそめた。いくら練習試合とはいえ舐められたもんじゃない。紫苑がゆっくり周りを見渡すと、ボードを片手に持った先生と眼が合った。
「…あぁ、来たか。よろしく、監督の竹内です。ところで、そちらの監督は?」
「あぁ、私です。」
「は?君が!マネージャーじゃなかったのか?!」
「監督の相田リコと言います。今日はよろしくお願いしまーす!」
素早く頭を下げよく通る声で挨拶をする。
「あ…あぁ…」
竹内は思わず頭を掻いた。まさか、こんなところと試合をするなんて思ってもなかった。思うはずもなかった。