第4章 勝てねぇぐらいがちょうどいい
リコはにこやかにお礼を言うと、黄瀬は火神を無視して黒子と紫苑に駆け寄った。彼としては二人に会えれば周りは気にしないらしい。
「黒子っち、しおりん、うちにおいでって言ったのにあんなにアッサリ振るから、毎晩枕を濡らしてるんスよ。もう…」
泣き真似をしながら愚痴をこぼす黄瀬に日向の冷たい視線が突き刺さる。
「なんなんだ、アイツ。」
「さっさと案内しろ!」
しかし、黄瀬には聞こえていない。目の前にいる黒子と紫苑に集中しているようだ。身振り手振りを交えて少々大げさん話しているように見える。が、これが彼のスタイル。
「俺、女の子にも振られたことないんスよ。しおりんが初めてっスよ。俺のこと振ったの。」
「私別に告白されてないんだけど…振ってないし…」
真顔で返す紫苑に少々傷つきながらも、黄瀬は口を止めない。
「無視かよ…」
もう、別世界に入っているようだ。
「さらっと嫌味言うのやめてもらえませんか。」
ふと、黄瀬の目が鋭く変わった。しばらくじっと見つめていると不意に火神を振りかえる。
「だから、黒子っちにあそこまで言わせる君にはちょっと興味あるんッス。キセキの世代なんて呼び名に別にこだわりなんて無いっスけど…あんだけはっきり喧嘩売られちゃぁね。…俺もそこまで人間出来てないんで。悪いけど、本気でぶっ潰すっスよ。」
挑発的な黄瀬に火神の闘争心が燃え上がる。二人の間に火花が散ったかのように、あたりは一瞬静まり返った。
「…おもしれぇ…」