第17章 その黒は、心を支配する。(夜久衛輔)
「夜久先輩お待たせしました!」
「おう」
練習後、着替えを済ませた夜久とは並んで校門へと向かう。
「夜っくん!」
「クロ」
「これ持ってけ」
「なんだ?これ」
「それは帰ってからのお楽しみー、因みに俺と色違いデス♪」
黒尾が手渡したのは小さな紙袋。
ショッキングピンクのその紙袋はまるで中身を喜んで隠しているように感じた。
「じゃ、また明日な」
「……おう」
「あ、ちゃん。夜っくんの気持ちちゃーんと受け取んないとダメだかんな」
そう言って黒尾はに笑顔を向けた。
「?…………は、い…」
黒尾の言葉の真意はわからない。
でも主将の言葉としては素直に頷いた。
「、行くぞ」
「あ、はい!黒尾先輩、お疲れ様でした」
黒尾に一礼しては先を歩く夜久の背中を追った。
「黒尾先輩の言ってた意味…なんだったんでしょう?」
「…さぁな」
「でも、夜久先輩の名前言ってましたよ?」
「…知らねぇ、ホラ入れよ」
「あ、はい。お邪魔します」
どことなく、いつもと違う夜久の様子には少しの違和感を覚える。
だが、毎日の忙しい部活のこうした合間に二人きりで過ごせる時間はとても貴重で大切なもの。
は気のせいだと思うことにした。
恋人と、
これから過ごす甘い時間に心を躍らせながら。