第17章 その黒は、心を支配する。(夜久衛輔)
「おやおやぁ~?こりゃまたズイブンこえー顔してんな」
「………クロ」
黒尾は夜久の視線を辿る。
そこには『いつものように』楽しく談笑する灰羽とマネージャーであるの姿。
「あんま気にすんなよ、リエーフが懐いてんのに深い意味はねぇよ」
「……気にしてねぇ」
「夜っくんが俺に嘘つくのは絶対無理デス」
「うっせ…」
そう、夜久の彼女でもあるに灰羽が構うのはペットと主みたいなもの。
サーブレシーブ、それにスパイク。
上手くいった時は仕切りにに褒められたがる。
「デケェ犬みたいなモンだろ」
「…………」
まぁ、自分の彼女が他の男を構うのは面白くねぇか。
ふむ、と黒尾は顎に手を当てて達を見つめた。
「…夜っくん、ならワルイ子ちゃんにお仕置きするか?」
「……は?」
黒尾の突拍子もない言葉に夜久は目を見開いて驚いた。
お仕置きって、言ったのか。
「だからお仕置き、もちろん夜のお仕置きな」
体育館の片隅でドリンクを飲みながら言う黒尾の言葉は、青春の汗を流すこの体育館には不似合いな言葉たちばかり。
「なんだよ、それ……」
「今日どうせちゃん、夜っくん家寄るんだろ?だったらそこで躾直せって事」
尻尾を振る相手を間違えるな、
お前が愛想を振り撒いていいのは誰かって。
「でも、クロ……」
「だって悪いのは、」
「……!」
「…………ちゃんだろ?」
悪いのは。
その黒尾の言葉はストンと夜久の心に落ちた。
そうだ、俺が気を遣う必要はない。
そう思うと夜久の心はとても落ち着いた。