第10章 日常小話、幸せ話。(灰羽リエーフ)
最終選考まで残った、でもその先へ行けなかった、そう淡々と話してくれた。
悔しいはずなのに、泣きもしないで。
なんで笑うんすか?
俺の前でならいくらだって弱いところ見せていいのに。
『さん、さんが泣かないなら俺が泣きましょーか?』
『…え?』
『なんて…それじゃ意味ないでしょ?』
『リ、エーフ……っ』
そこから我慢してた涙が一気に溢れて、彼女は肩を揺らして泣いた。
俺の胸にすがって、それを俺は包み込む様に抱き締める。
いつも甘えさせて貰ってる分、こんな時は頼られる男でいなくっちゃ!
くっついていた頬と頬。
それを少し離して代わりに唇を寄せる。
それから、こめかみ、目元、おでことキスを落として最後に唇へ。
この時、漸く彼女の表情を見る。
『可愛い…さん』
『……甘えて、いい?』
『そのための俺ですから!』
もう一度抱き締めてキスをする。
その後さんをお姫様抱っこで寝室へ運ぶ。
いつもなら『恥ずかしい』って暴れるのにその日はすごくおとなしい。
これは相当なダメージと見た。
そりゃそうだよな、春高行けない様なモンだろうし。
俺がそうだったらすげーヘコむだろうし。
『甘えていーっすからね、ヤダって言っても…ドロドロに甘やかしますから』
『ヤダなんて、言わない……』
あぁもう、こうなったさん、ヤバ過ぎ。
いつもは格好良いって思う時だってあるのに、甘え始めた途端すげー可愛いんだから。
これが俺にしか見せない顔なんだと思うともう堪んない。
…色々と、バクハツしそうです!