第9章 シンクロハートビート。(菅原孝支)
日曜日、午後から菅原先輩が我が家にやって来た。
時間もピッタリでそんな所も先輩らしいなと思ってしまう。
「部屋は二階です、どうぞ」
「うん、お邪魔します」
この日の為にメチャクチャ掃除して、小物の配置まで変えたりして…とにかく人生で一番整頓された部屋になってると思う。
「やっぱり女の子の部屋だなー!可愛い」
先輩はそう言って棚の上に置いてある小さなくまの縫いぐるみの鼻をちょんと指で触れた。
「あ、ありがとうございます…っ」
その一言だけで、この一週間の私の頑張りが報われた気がします…!!
「これ…使って下さい」
「おう、ありがと」
先輩にクッションを手渡して座るように伝えて、私も隣に並んで座る。
「あ、月バリ!新しいヤツじゃん」
「あっはい!特集が春高で…ライバル高もたくさん載ってたんです」
机の上に置いてあった月バリを先輩が見つけて手に取った。
春高に向けてちょっとでも勉強しようと思ってここのところ毎日目を通している。
「音駒も梟谷も載ってました!木兎さんなんか半ページ丸々使われてて凄いんですよ!あ、もちろん烏野も載って………先輩?」
初めは笑って聞いていてくれた菅原先輩の顔から一瞬笑顔が消えて、今度は困ったように笑う。
「じゃあ…今の頭の中は別の男でいっぱいなんだ……?」
「えぇっ…!?」
「マネージャーとして俺達の為に一生懸命なのはわかるけど…妬けるなぁ」
パラパラと眺めていた月バリをパタンと閉じて、先輩は私の方へ振り返る。
まさかの発言に私はなんて返したらいいのか。
それを必死に考えていたら、いつの間にか距離が詰められる。
「す、菅原…先輩?」
「…初めて家に上がるわけだしさ、がっついたりしたくなかったんだけど……あーっ!もう!があんな嬉しそうに他の男の事話すからだぞ…」
「えっ?えっ…!?」
両頬を先輩の両手に包まれる。
「俺しか見れない、知りたくなっちゃうじゃんか……」
切なく笑った菅原先輩の顔が、間近に迫る。