第4章 “隼”からのお誘い
昨日の二の舞はごめんだと、そそくさと2人駅に向かう。
「あぁ、ねえ、明日も休み?」
『えっ…まあ、休みではありますけど…』
いきなりなんなんだ…と思うのもつかの間で、
「じゃあさ、“僕らの家”に来ない?」
……はい?あって2日で家に招待とはこの人のパーソナルスペースはどうなっているのだろうか。
まあ、この短い間で少し変わった…いや、だいぶ変わった人だとはわかったけれども。
しかも“僕らの”とはどういうことかわからない…シェアハウスでもしているのだろうか?
そういえばこの人アイドルだったような…?
『あ、あの、招待に関しては嬉しいのですが、服もずっとこのままというわけにもいきませんし…』
彼は問題ないとでも言うようなニコニコした顔でこちらをみている。
「んー、問題ない、さ」
やっぱり問題ない…らしい。
いや、大アリなんですけど…!?
「あ、その前にさ、ずっと言い忘れてたことがあるんだけど」
『はい?』
「友達になろう?」
『…?』
いきなり言われ、思考回路が止まる。
小首を傾げてしまうほど、今何を言われたかわかっていない。
「昨日?かな。あまりない出会い方だったけど、今日1日付き合ってくれたし。それに、君といてとても楽しかったんだ。」
隼さんはさっきとは打って変わり目が真剣である。
軽くは考えていない…ということだろうか?
『…私も、私も楽しかったです。今日。ぜひ私も友達になってほしいです…!』
「…うん。よかった。断られるかと思ってたから」
彼は安堵したようにため息をつき、そしてこちらに持ち直した。
「じゃあさ、敬語やめないかい?僕らはもう“友達”なんだろう?」
彼のいう“友達”という単語がなんだか特別に思えて、なんだか嬉しかった。
「…うん、よろしく!隼さん…」
あぁ、呼び方はこのままでいいのだろうか。
と、少し脳を横切った疑問を読んだかのように
「呼び捨てでいいよ。僕も呼び捨てでいい?」
そう言って差し伸べられた彼の手と自然と握手した。
「わかった。じゃあ改めて、隼、よろしくね」
ふにゃりと笑った彼の顔は夕日に染まり、眩しく輝いて見えた。