第3章 デート?
休日ともあり、遊園地の近くになるにつれ人が多くなっていく。
「…あれ、霜月隼じゃない?プロセラリーダーの」
「え、こんなとこに来るの?撮影?」
「近くで見るとかっこいい」
………黄色い悲鳴が度々聞こえてくる。
隼さんはこれに気づいたらしく、少し困った顔をしていた。
「…やっぱり気づいちゃうよねぇ。うーん、おまじないでもかけるか。今日限定でね」
『え?』
彼がそう言うと、綺麗にステップをふみくるりと一回転した。
そしてこの一言。
「ちちんぷいぷーーい!」
魔法とか呪文とかそういう類のものの代表的な言葉を吐き、彼は満足したようにゆっくりと歩き出した。
『ま、まってください!隼さん!』
『さっきのあれは何なんですか?』
“さっきのあれ”とは、まさしく彼曰くおまじないのことである。
「んー?だから、おまじない。」
『はい!?』
まっったく意味がわからない…。
「なんのおまじないかはもう効果出てるからわかると思うよ?」
彼はそういうが、やはり何が何だかわからない。
…いや、そういえばさっきと比べて静かなような…。
「…気づいた、かな?」
『…さっきまで聞こえてた黄色い悲鳴が聞こえないです…』
そう、“霜月隼”に対しての騒ぎが聞こえないのだ。
聞こえないというか、周りが“霜月隼”に気づく前に戻ったような感じだ。
普通の日常。変わらない。
「ファンとは仲良くしたいけど、今はプライベートだからね。みんな僕を一般人と同じだと思っているのさ」
隼さんは自慢げに話した。